第二章 「さらば青春の光」

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 僕がイギリスを知ったのはビートルズがきっかけであったとは前項で書きましたが、僕のイギリス好きを決定付け、その後の僕のライフスタイルにもっとも影響を与えた映画があります。それは一九七九年に本国イギリスで上映された「さらば青春の光」です。

 この映画は、モッズというユースカルチャーを完璧なまでに映像化したもので、初めてこの映画を観た時に僕は、モッズ達のファッション、ライフスタイル、苦悩と煌めきすべてにヤラれてしまいました。

 ブライトンの海辺へスクーター(ベスパやランブレッタ)を駆って颯爽と集合する道すがらの朝の光、ナイトクラブに満ちわたる物憂げで、ちょっとオプティミスティックな照明。フィルムに描かれるそんなすべての光が、シクスティーズのR&Bと相まって、当時一六歳だった僕にとてつもない感動と憧憬を与えてくれました。

 それからというもの、映画に出てくる主人公さながらの金色のベスパに乗り、
目を見張るような派手なデコレイションを施しました。一番のピーク時には、サイドミラー二十個、ライト二十個、二メートルのポールの先にミンクの尻尾をぶら下げ、ハンドルにヴィーナスの像。シートは長い背もたれがあり、柄は豹柄。まるで映画の一場面を切り取ったかのようなベスパの族車でした。

 それに跨がり、軍モノのパーカーを羽織り、友人の銀色のベスパと僕の金色のベスパに仲間を各々一人ずつ乗せ、四人二台で並走したり蛇行しながら、R246を走り、クラブハウスへ繰り出していました。懐かしいな。

 今となっては、当時の仲間達も(一人を除いて)社会人となり、自動車に乗って安全運転をしています。聴く音楽も様々になり、目に入るものとそれの感じ方も違う。英国狂いなままなのは僕くらいになってしまっています。少し寂しいけども、イギリスが好きなのだから仕方ありません。

 最近は固執していただけあって、これまた似たような英国狂いが周りに集まり、僕の英国ライフも充実してきました。かといって、昔のようにベスパで蛇行運転しようとは思いませんが...。

 モッズのようなユースカルチャー以外の伝統的な文化や歴史、景色や建築物などにも素晴らしさと奥深さを感じ、広義的な意味でイギリスをいう国を愛し始めています。もしかしたら、いやきっと、僕の中の英国ブームはこれからなのかもしれません。

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