第四章 「地下鉄のある生活」

Baker Street
 ロンドンを散策する際に最も利用でき、なおかつ便利な移動手段はなんといってもチューヴ(またはアンダーグラウンド)こと地下鉄です。

 ダブルデッカーも捨て難いですが、イギリスといえばやっぱり地下鉄。世界で一番最初に地下鉄を発明した国なだけあって、ロンドン市内を完全に網羅しています。観光名所の近くには必ず駅があるし、駅と駅の距離が短いため、ひとつ手前の駅で下車して、目的地まで景色を眺めながら散歩などしても楽しい。

 イギリスの地下鉄は、フランスなどと同じで範囲によって値段が違います。中心部はゾーン1、そのひと周り広い範囲がゾーン2といった具合です。ゾーン1の範囲で行動すれば何度でも乗り降り自由なのがまた素晴らしい。ただし、注意しなくてはならないのが、日本とは違い、乗り越し清算ができないということ。つまり、ゾーン1の切符でゾーン2に乗り越してしまった場合、かなりの罰金を請求されてしまいます。確かに注意していればそんなに怖いシステムではないけれど、心配であればワンデイトラベルカードやウィークリートラベルカードを買えば問題はありません(この切符があればゾーン2範囲まで乗り降り自由)。僕は滞在中、この切符を買ってロンドン市内を右から左へ駆け回りました。

 僕がイギリスの地下鉄で驚いたことが幾つかあって、まずエスカレーターの速さ。これがもの凄く速くてせっかちの僕には心地良かった。日本のエスカレーターより二倍は速く、本当にギュンギュン進む。僕同様せっかちな日本人が真似しないのが不思議なくらいの優れものでした。実際、帰国後空港で乗ったエスカレーターがあまりに遅く感じてやきもきしたほどです。

 また、日本と違うのは速さだけでなくルールも違います。イギリスでは立って乗る人が右、急ぐ人が左と日本とは逆でした。(実は日本でも関西ではイギリス式...)これは事前に聞いていた情報ではあったけども、やはり驚きました。左側通行というルールを完全に遵守する律儀な国民性の顕れであると思います。

 次に驚いたのがなんといっても車内の狭さ。座席と座席の間隔が特に狭くて、人がひとり立ったらやっとのスペースしかありません。関東在住の方であれば、都営大江戸線の車内を想像してもらえれば大体のイメージは掴めると思います。

 車内といえば、吊り革も少なく荷物棚などもありません。確かに狭い車内に棚を付けたら余計に狭くなってしまい、身長の高いイギリス人には大変かもしれませんが...。

 最後に僕が最も驚き、感心したのが地下連絡通路に設けてあるストリートライヴスペースです。丁寧にサークル状に線が引いてあって、その中で思いおもいのパフォーマンスができるようになっている。実に粋なはからいをイギリス人はするものだと感心しました。

 僕は滞在中、毎日この前を通るのが楽しみでした。めちゃくちゃ渋い黒人のおじいさんがサックスを吹き鳴らし、自前のラジカセから流れる音楽に合わせてセルフセッションしてみたり。なかでも度肝を抜かれたのは、ノーブラにタンクトップ一枚でヴァイオリンを掻き鳴らしていた女性です。余りの激しさに、寛容であるはずのイギリス人も目が点でした。おかまいなしの女性、格好良かったなぁ。

 また渡英したときは必ず立ち止まり、単語の持つ本来の意味通りのライヴに耳を傾けたい。僕が通る度に、毎回ジャクソン5の「I WANT YOU BACK」をサックスで吹いてくれたお兄ちゃん、また向こうから歩いてくるんで吹いてくれますか?楽しみにしています。それと、違う曲であってもいいですよ、僕は結構知っていますから。

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