第五章 「若者が英国料理を変える!?」

English Breakfast
 昔からイギリスといえばご飯(料理)が不味いというのは本当にたくさんの人から言われ続けてきたことであって、それは定説と化しています。実際僕が渡英すると決まったときにも、渡英経験のある母親から「もの凄く不味いから、覚悟しておきなさい」と何度も言われました。

 英国料理の評判が日本人に対してすこぶる悪い理由は、調理方法にあると言われています。主に煮る・焼くといった単純な調理方法で、煮るといったら本当にグデグデになるまで煮て、焼くといったら本当にズブズブ焼くだけ。確かに誤解されても仕方ありません。

 ですから、代表料理のローストビーフは肝心の肉よりもグレイヴィーソースに旨味を感じ、ベイクドビーンズは食感よりもやはりトマトソースに旨味を感じる人が多いようです。

 食娯楽のイタリア人のこだわるアルデンテや、日本人がこだわる歯応えなどは英国料理にはさほど重要視されていないのだと思います。

 そして塩加減の適当さにも、英国料理不評の原因があるようです。極度に薄味に感じるものがあれば、逆に濃過ぎるものもあり、またそれが店こそ違えど同じ料理で起こってしまう塩梅なので、どちらが伝統的な英国料理の味なのかが僕ら外国人には分別つかずに混乱してしまい、英国料理は不味い!という結論に達してしまう。確かに繊細な味覚感覚を持つ我ら日本人には少々大雑把な味付けに感じるかもしれません。英国料理は大味で不味いという常識はこういう幾つかの要素・背景によってできあがったことのようです。

 と、ここまでは十年以上前のハナシ。

 数年前に保守党から、ブレア率いる労働党に政権交代されてからは内政も一時安定し、失業率も下がり(もう過去の話?)、若者が小金を持つ時代に突入しました。その影響からか、ポッシュな若者はファッションはもちろんのこと、食事にもより良いものをという風潮になり、今やロンドンはトレンディーなレストランやビストロが軒を連ね、その味も昔とは比べものにならないほどレベルアップしてきています。

 実際、僕が滞在中に入ったレストランの料理はどれも美味しくて、英国料理に対するネガティヴな先入観はふっ飛んでしまいました。もう英国料理が不味いという常識は過去のものとなりつつあるように思えます。

 そして、こういった食文化の向上はなにも急激に起こったものではなくて、数年前からその兆しはあり、ゆっくりゆっくりと日進月歩を繰り返して現在に至ったのであって、ここ最近渡英した人は既に美味しくなってきている英国料理を(店の当たりはずれはあるにせよ)口にしているわけです。

 結局なにを伝えたいのかと言いますと、英国料理は不味いという台詞は、もう帰国した日本人の決め台詞でしかないのではないか?ということです。

 本当に口に合わなかった人も勿論大勢いるとは思いますが、揃いも揃って英国料理は不味い!と言うのはかなり信じ難い情況です。僕のような好意的な感想を持った人も中にはいるということを知った上で、これから渡英する人は英国料理を体験して欲しいのです。きっと、想像していたよりも普通、もしくは美味しくて驚くはずですから。

 思う存分想いのたけを言いましたが、英国の伝統的な田舎料理や家庭料理はかなりクセがありますので、心して飛び込んでください!ジャンピン・インザ・レイク!

Copyright (C) Nagashima Tomohiko All Rights Reserved.